Furutaka memo

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排ガス規制の概要:船舶からの排ガスを削減する取り組み


排ガス規制の概要

 船舶からの排ガスに関する規制は、国際海事機関(IMO)で審議され、2005年に窒素酸化物(NOx)と硫黄酸化物(SOx)の排出に対する規制が開始された。船舶からの排出物に含まれるSOx、微粒子物質(PM, particulate matter)、NOx の排出規制はMARPOL条約 附属書Ⅵに規定されている。

SOx規制

SOxは燃料中の硫黄分が燃焼により発生する。

そのため、使用燃料の硫黄濃度が規制されている。最初の規制では、北海、バルト海などの排出規制海域(Emission Control Area : 以下ECA)では1.5%以下、一般海域では4.5%以下と規定され、その後の規制強化により、ECAでは2015年から0.1%以下、一般海域では2020年から0.5%以下になっている。

 ECA内を航行する船舶は上記基準を満たす燃料油の使用が求められるため、ECA航行時は燃料を硫黄分濃度の低いものに完全に切り替えておく必要がある。また、同等処置として排ガス洗浄装置(SOxスクラバー)などの使用されている。

参考文献:

SOx・PM規制 | ClassNK

SOx規制への対応について - 国土交通省 

温室効果ガス排出規制

 気候変動防止のための温室効果ガス排出削減については、国連気候変動枠組み条約締約国会議(いわゆるCOP)で議論されているが、国際海運からの温室効果ガス(二酸化炭素)削減はIMOが担当している。

IMOは2008年を基準に、2023年までに国際海運全体の燃料消費効率を40%改善することを目指し、2050年までに温室効果ガス排出量を半減させ、最終的には今世紀の早い時期に温室効果ガス排出ゼロを目指している。

これに対応して、二酸化炭素排出を約20%削減できる天然ガスが船舶用燃料として使用され始めている。また、記念では燃焼時に二酸化炭素を排出しない水素やアンモニアも船舶用燃料として注目されている。

参考文献:IMOのGHG削減戦略 | ClassNK 

 

アンモニア燃料船 関係記事:

世界初、内航船用エンジン実機を用いたアンモニア混焼試験を開始 ―燃料アンモニアの利用を通じた温室効果ガス排出量削減の実現へ― | ClassNK

 

排ガス処理装置(SCR、SOxスクラバー)について

1,排ガス処理装置

環境保護を目的として排気ガスの排出規制が強化されている。これに伴い排気ガスに含まれる窒素酸化物や硫黄酸化物を削減するための船舶が増えてきている。この記事では

排ガス処理装置としてSCRとSOxスクラバーについて紹介する。

2,SCR

窒素酸化物NOxの処理装置として、SCR(Selective Catalytic Reduction)がある。SCRは、ガス中に尿素水を噴射し、排気ガスの熱でアンモニアを生成し、触媒上でNOxと反応させ、水と窒素に還元することでNOxの排出量を低減する技術である。

SCRの排ガス処理工程を以下に示す。

  1. 排ガスが触媒のあるスクラバーに流れる。
  2. 排ガス中に尿素水が噴射され、熱分解によりアンモニアが生成される。
  3. 排ガスとアンモニアが混合され、触媒上でNOxが窒素と水に還元される。

排ガス中で噴射される尿素水について説明する。

尿素水は劇物には指定されておらず、アンモニア水に比べ取り扱いが容易である。

自動車ではAdBlueと呼ばれるSCR専用高品位尿素水が用いられるが、尿素濃度は32.5%と低く、高価であるため船舶での使用に適さない。

船舶では工業用に製造された尿素濃度40%以上のものが用いられる。尿素の溶解度は0度で40%であるため、40%以上を使用する場合、尿素タンクに保温設備が必要となる。

3,SOxスクラバー

硫黄酸化物SOxの処理装置として、SOxスクラバーがある。SOxスクラバーは、排気ガスを海水などの洗浄水で洗浄し排気ガス中の硫黄分を削減する。洗浄後の海水を浄化装置でスラッジと分離して排水するオープンシステムと、排水の水質が規制されている地域などで、洗浄水を循環させるクローズシステムがある。

 

 

 

 

 

 

燃料油供給ラインの仕組みと役割:燃料油循環ポンプから主機関への供給

1.はじめに

 この記事ではディーゼル機関を装備する船舶においてC重油を使用した場合の燃料油系統の一例を紹介する。

2.燃料油系統

  • 燃料は、燃料タンク(F.O Tank)に積込まれ、蓄えられる。貯蔵された燃料は燃料移送ポンプ(F.O Transfer Pump)を通って、油澄ましタンク(F.O.Setring Tank)に送られる。
  • 燃料油は経済性から低質油(C重油など)が使用される場合が多いが、油分中の不純物が多いため除去が必要となる。そこで、燃料タンクに貯蔵された燃料油を一旦、油澄ましタンクに入れることで水分、スラッジ等の分離を図る。しかし、依然として燃料油の清浄度は低いため、油澄ましタンクの燃料油を清浄機で処理する。
  • 清浄機は油中の水分、スラッジ等を除去する装置である。回転体内で遠心力を利用して比重差のある燃料油と水分、スラッジ等を分離させる。
  • 処理する燃料油は、事前に加熱器(Purifier F.O. heater)にて、加熱される。清浄機により処理された油は、燃料油常用タンク(F.O.Service tank)に送られる。

燃料油澄ましタンク及び常用タンクは、加熱用の蒸気管が内蔵され、常に高温が維持される。

図1 燃料油清浄ラインの概略図
  • 燃料常用タンクの油は燃料供給系統から主機関に供給される。燃料はこし器を通過したのち、供給ポンプにより加圧され、高圧ラインに供給される。
  • 燃料油循環ポンプで加圧された燃料油は、加熱器にて、所要温度まで加熱され、主機関に送られる。加熱温度調整は、粘度調整器で行われる。
  • 加熱器出口には、2次こし器が装備され、燃料中の不純物を除去する。

図2 燃料油供給ラインの概略図

 

 

 

来島海峡大橋の夜景

今日は、来島海峡大橋を訪れることが目的でした。この橋はその壮大なスケールと、周囲の自然との調和で知られています。夕方の急な思い付きにより、到着は夜となりましたが、暗闇の中で大橋が点灯し、その光が水面に映り、美しさ感じました。

大橋の巨大な塔と、均整の取れたケーブルが夜の帳に映え、人々の技術と自然の力が融合しているように感じます。夜の大橋は初めて見ましたが、日中とは異なる特別な美しさを持ち、夜ならではの魅力を感じました。

瀬戸内海を渡す大橋の堂々とした姿と、行きかう自動車を見ると、大橋がただの構造物ではなく、人々の生活や文化の一部であることを再確認できました。

 

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EGR(排気再循環)について

1,EGRとは

EGR(排気再循環)は燃焼室から排出した排気ガスの一部を、再度燃焼室内に戻す技術である。これにより、燃焼室内の酸素濃度を低下させ、燃焼温度のピーク値を抑制することでNOxの生成が低減される。以下にEGRに関連する処理を述べる。

2,排ガスの洗浄

排ガスは硫黄酸化物(以降SOx)や固形物(粒子等)を含んでいる。

SOxは空気中の水分と混合することで硫酸となるため、燃焼室を腐食させる。

また、固形物は吸排気弁とシリンダーヘッドの間に噛み込み、圧縮不良などにつながる。

そのため、排ガスを清水で洗浄し、SOxや固形物の除去が必要である。

排ガスの洗浄後の水(以降、洗浄水とよぶ)は固形物を含み、SOxにより酸性となる。

3,洗浄水の処理

船上において水は貴重であるため、再利用できるよう処理する必要がある。洗浄水の固形物は清浄機、フィルター等を用いて取除き、酸性の液体は薬剤を用いて中和を行う。中和に用いる薬剤には水酸化ナトリウムを用いる。

排ガスに清水を噴射すると、排ガス中に含まれるSOxは、水と反応し硫酸 H2SO4となる。硫酸は水酸化ナトリウムと反応すると、硫酸ナトリウムと水が生成される。反応式は以下のようになる。

H2SO4+2NaOH →Na2SO4+2H2O

生成された硫酸ナトリウムの水溶液は、強酸である硫酸と強塩基の水酸化ナトリウムから生じた塩の水溶液であるため、中性を示す。

4,まとめ

・EGRは排ガスを再循環させ、NOxの発生を低減させる技術。

・排ガスを再循環させる前に、清水で洗浄する。

・洗浄水に含まれる固形物は清浄機で除去、液体は水酸化ナトリウムで中和。

 

 

波止浜湾からの今治造船 本社工場

撮影日は令和3年(2021年)9月4日です。この日は日本の愛媛県今治市にある波止浜湾へ行きました。訪れた際はEVERGREENという大手コンテナ運送会社向けに2隻のコンテナ運搬船、EVER CERTAINとEVER COMMANDが艤装中でした。

これらの船は、おそらく2000TEUの積載能力を持っていると思われます。このサイズは、中規模のコンテナ運搬船に分類され、世界中の主要な貿易ルートで広く利用されています。

 

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波止浜

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EVER CERTAIN

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EVER CERTAIN オモテ側

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EVER COMMAND

ディーゼルエンジンの作動原理とは?

 ディーゼル機関では、シリンダ内に空気を吸入し、ピストンで圧縮して高温高圧になった空気中に燃料を噴射することで、自然着火させピストンを動かして動力を得る。

 ディーゼル機関には、吸気、圧縮、燃焼、排気の過程がある。ピストンが動く各行程をストローク(Stroke)またはサイクル(Cycle)と呼ぶ。

 シリンダー内で燃焼させるために、クランク軸を2回転ごとに1回燃焼させるものと、1回転ごとに1回燃焼させるものがある。前者を4ストローク機関と呼び、後者を2ストローク機関と呼ぶ。

 4ストローク機関では、ピストンが2往復する間に吸気行程、圧縮行程、燃焼行程、排気行程の4つの行程がある。

 2ストローク機関は、初行程で吸気と圧縮が行われ、次行程で燃焼と排気が行われる。これによりピストンが1往復する間に、吸気、圧縮、燃焼、排気を2行程で終えることができる。

 以下で4ストローク機関と2ストローク機関の各工程について説明する。

  1. 吸気行程(Suction stroke): 吸気弁が開きピストンが下死点(ピストン運動により回転力が発生しない最低地点)まで降下する際に、シリンダ内にバキュームがかかり吸気を行う。
  2. 圧縮行程(Compression stroke):この工程では吸気弁、排気弁はとじ、ピストンが上昇すると、シリンダ内の空気は圧縮され、高温高圧状態になる。
  3. 膨張行程(Expansion stroke):ピストンが上死点ピストン運動により回転力が発生しない地点の最高位置)に到達したとき、燃料噴射弁から燃料を霧状にして高温高圧のシリンダ内に噴射すると、自己発火して温度と圧力が急上昇する。この燃焼ガスがピストンを下死点まで押し下げてクランク軸を回転させる。
  4. 排気行程(Exhaust stroke):この工程ではピストンが下端に達する前、すなわち燃焼が終わる付近で排気弁が開き、ピストンが再び上昇を始め、燃焼を終えた排気をシリンダ内から排出する。排気を放出しながら上端に達したとき排気弁を閉じる。

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ストローク機関作動図

 

  1. 吸気・圧縮行程 :ピストンが下死点まで下がると、掃気孔から新気が吸気される。ピストンが下端から次第にシリンダ内を上昇すると、掃気孔が閉じ、続いて排気弁が閉じると空気の圧縮が始まり、シリンダ内の空気は次第に高温高圧状態になる。
  2. 燃焼・排気行程 :ピストンが上死点に達したとき、高温高圧になったシリンダ内の空気に燃料を霧状に噴射させると、着火燃焼してこの燃焼ガスがピストンを押し下げる。ピストンが下がり下死点付近で排気弁が開き、次にピストン側面で閉ざされていた掃気孔が開き、排気と新気の入れ替えが始まる。

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ストローク機関作動図